パァン
キュルルレルル、プスン・・・キュルルレルル、プスン・・・
パァン、パァン
ちっ
いつもは簡単に出来ることも、慌てると何も出来ない
左爪先でシフトを上げ下げするも簡単にはニュートラルの位置に戻りやしない
右手奥から光が段々と大きく近づいてくる
あっーもうー
既に下りきった遮断機の先端が丁度、腹部の辺りにひっかかっている
こんなはずではなかった
もっと早くに帰宅し、この日三本目の映画「真夜中のカーボーイ」を観て床に入るはずだった
猫☆魂さんの芝居「
神の領域」を観劇後、
ちょっと顔だし程度に考えていた打ち上げ参加が、
ちょっとが少し、そして長々と居座ってしまい、
気付くと外は大雨で電車も止まっているとの情報が・・・
フェルメール・・・
そうだ、フェルメールだ
昼間に観た「
フィリップスコレクション」の
ルノワールの絵と同様
お気に入り画家の名前が突然出ずに相手に伝えられなかったモドカシさがよみがえる
深夜から雨が降るそうですよ
そして確かにその方から聞いていた
だから話をよく聞けよ
こんなときに・・・
自分の性格は大体分かる
思い出してしまったら相手に伝えたい
フェルメールが出ずに
ラファエロと口にしていた
どこかスッキリとしない心をようやく晴らす為に
どうにかその方に伝えたい
伝えたところで…
だけど伝えたい、結局は自分の心を晴らす為の自己満足だ…
しかし、どんな些細なことでさえ、やり残しがある時の人間は強い
・汗は出ていない
・急に来る吐き気や目まいもない
過去二回骨折している経験からか、すっ転んだ時にまずは体のどこか怪我をしているか
それが、骨折なのか自然と確認するようになった
同時に状況を把握する
警報が鳴り始めた踏み切りに入りかけていたため、
急いで通り抜けようとアクセルを回した際にタイヤが滑って転倒した
幸いバイクは前方に飛んだ為に足が下敷きにはなっていない
問題は、、、
いくら250CCという軽い車体とはいえ、雨中に線路内から引っ張り出すのは大変なことだ
左右を見る
電車が近づいて来てはいるが、まだ距離がある
さらに、バイクが倒れている車線とは反対側
冷静にバイクを起こしエンジンをかける
一度倒れたバイクの火がつくまでは時間がかかる
ひとまず移動させねば。。。
線路内から外にでるため前に押そうと頑張るが
現在のバイク、エンジンが切れた状態ではギアがニュートラルに入っていないと
タイヤが自動的にロックし動かなくなる。
なんでもこれが安全のための機能らしい
どこが安全なんだ…
この間にも電車は近づく
いくら轢かれはしないと分かっていても、このままでは電車も横を走りぬけはしないだろう
エンジンをかける
案の定、簡単には点かない
そんなことは承知のこと
この一瞬キュルルルルルとセルが回っている状態になると
タイヤのロックが一時解除されるその仕組みを知っている
キュルルルル→押す→前に動く→キュルルルルル→押す→前に動く
3,4回繰り返し何とか線路外に出た
少しだけ焦る、そして少しの安堵感
ずぶ濡れの白いシャツとジーンズと皮靴
美術館に入るため少しばかりフォーマルにまとめた格好が崩れている
真夜中のカーボーイ…
これから観ようとしていた映画はこんな感じなのかな
そんなことはどうでもいい
どうでもよかったが気になった
フェルメールと真夜中のカーボーイ
全く関与しないであろう二つの点と点が頭の中で駆け巡る
いざという時、男は呆然とする
向田邦子さんの作品の中でよく描かれる
今回の僕は呆然としなかった
呆然とするどころか、様々なことを考えた
骨折…フェルメール…脱出…真夜中のカーボーイ
自分しかいない時、そんなときは呆然としてられねえ
男は1人の時が一番頼りになるのかもしれない
守るべき女性(ヒト)がいる状態とは、裏面甘えてしまう状況がうまれてしまうのでは?
結局この日帰宅後に「
真夜中のカーボーイ」は観なかった
代わりに知ったのは、自分が死んでいたかもしれない本日のブログのアクセスカウントが
今週一番に最低の数字
32…
いつもの半数だ
笑ってしまった
そういや、この日一度も更新していない
こんなものだ、、、